中小企業のためのオンラインストレージはAeroFSでいいかもしれない
そもそもクラウドって。
現在よく使われているクラウドストレージサービスとはどういうものかというと、自分のPCに保存したファイルが自動的にサーバに送られ、そのファイルの履歴を判断し相違がある場合に、もう一方のPC側に同じものをコピー送信するという仕組みです。なので判別・送信にどうしても遅延が発生します。また、ファイルは複製品であり、そのPCのファイルとこちらのPCのファイルは同じように見えてても別物です。2台のPCならば、この世には同じ2つのファイルが存在するということです。ファイルサーバシステムには誰かがファイルを編集作業している間は、他の人が邪魔しないようにそのファイルを開けなくするファイルロックという機能がありますが、クラウドの場合はそれぞれ自分のファイルがあるわけですから、同時に2人が例えばExcelの「渋谷店顧客リスト.xls」を操作していても、それぞれのPCの渋谷店顧客リスト.xlsを開いているのでファイルロックは関係なかったり、そのような機能があったとしても、前述のネットワークの遅延でタイミングがズレたり、とにかく、人にはどういう風にそれが行われているか分からないため、確実なモノではありません。
1人で複数台使っている場合は、保存したタイミングを知っており、待つことができるので、そんなに問題ないものの、複数人が同じファイルを同時に扱う場合は、遅延とファイルロックの部分で、コンフリクトを起こすことになります。店長A子さんは自分のお客様の市子さんの情報を入力し保存、もう片方のPCでは店員B子さんが弐子さんの情報を入れて保存、すると次にファイル開いた時、店長A子さんは市子さんの情報が無く愕然とするのです。
クラウドとはそういうもので、同時処理の可能性がある類のファイルは複数人で取り扱いしない方が良いでしょうし、もしくは作業の時間差を作る(勤務時間の異なる人で取り扱う、または作業中であることを知らせる)/編集担当者と閲覧担当者を分ける などなど使い方を工夫する「割り切り」が前提です。それでもやはり革命的に便利なものなんです。その為だけに外部の保守費用やSEを雇う人件費もほとんどの場合必要ありませんし。
最も必要としているのは簡単なファイルのやりとり。
多くの場合、各営業所や店舗とのファイルのやりとりをシンプルにすることを望んでいることが多いです。PCは使っているのだけれど、今必要なファイルが誰のPCのどのフォルダにあるんだか...というような状態の会社も未だ少なくありません。各店で撮った写真を本社へメールで送り、本社の担当者が全店分フォルダ整理する。担当者さん本来の仕事が出来ずに泣いています。
仕事柄、専門外ながらもお客様から社内のネットワークに関する相談を受けるのですが、僕はその会社に余っている不要の使えそうなPCを使ったり、またはNAS、または格安の HP ProLiant MicroServer(コレめちゃくちゃいいです)にLinux/Windows Small Business Server/Windows Home Serverなど、それぞれ適した機材を選んで「ファイルサーバ」を構築してあげることがあります。
ファイルサーバより簡単でメリットがあるクラウドストレージ
上記の例で言えば、同時に複数人が取り扱う「渋谷店顧客リスト.xls」は、バックアップは別として、ファイルサーバの中にこの世で1つだけ存在させておき、誰かが作業している間はファイルロックで誰も触れることができない状態にしておく。
でも一方、この会社に於いておそらく同時に複数人が作業をしないであろう「写真」。
これは「商品写真」とか「ディスプレイ撮影」とか適したフォルダをPC内に作りクラウド化すると、撮った本人が自分のPCのそのフォルダに写真を入れるだけで、全員のPCに同じ物が現れることになります。本社の担当者が写真整理みたいなガキの使いをする必要がなくなります。発展して言えば、札幌店の営業さんが、ファイルを用意せずに外出し、たったいま渋谷店で撮った画像をノートPCでお客様に見せて提案することもできます。
P2Pの安心感と対応OSと設定のし易さ=AeroFSでいいかもしれない
有名なサービスとしては、DropboxやSkydrive、iCloud、Google Driveなどありますが、これらはデータ容量の大きさで課金され、運営会社のサーバにデータを置くサービスです。他人にデータを預かってもらうことになります。他社にデータを渡すなんて絶対に嫌だという人はたくさんいるでしょうが、先日ブログに書いた「AeroFS」や MS の Live Mesh、オープンソースの SparkleShare というモノは、中間的なコンピュータを介さずにPC同士が直にデータをやり取りします。預けないという点で安心感があり、ファイル容量の課金がありません。これをP2Pと呼んでいますが、その特性ため、どちらのPCも電源がONになっていなければファイルのやり取りができません。でもそれを24時間稼働のファイルサーバ(PCでももちろんOK)にインストールしてあげれば問題がクリアになります。
Live Mesh はとても良いですが、VISTA以降のWindowsかMacという制約がついてきます。XPが使えません。また、SparkleShare はgithub等gitリポジトリを用意する必要があり、ちょっとPCを噛った程度では少し勉強不足となります。
Linux、Windows、MacとOSをほぼ問わず(Mac版はJavaが必要になるのがちょっとアレですが)、簡単セットアップ、安心感で AeroFS が中小企業には今のところ抜きん出ています。※iOS版とAndroid版は開発予定のようです。
余談
周りのお客様を見ている限り、実稼働PCが10台程度の会社に対しても、事務機屋さんやシステム屋さんが提案するのは、エンタープライズ的なものでビックリする程フル装備・高性能な提案。
あまり知識の無い方は鵜呑みにし、見積書をもらってGOサイン出そうかどうかという所で「ねぇ、ねぇ、ところでさ、これくらい掛かるもんなのかね。」と。今年に入って何回もそれに遭遇し、悪意は無く真面目にそういうセッティングなのかもしれませんが、ちょっと悲しい気持ちになるので長々と書きましたとさ。